2023年11月29日水曜日

こころ 30 -「僕はばかだ」

 二人の認識の違いを図式的に整理した。

 この整理によると「僕はばかだ」という言葉は、二人の間でどのように意味を変えるか?


 考察の緒としてまず次のように考えてみる。

 「僕はばかだ」を「僕は〈  〉から〈  〉に〈  〉つもりだ」と言い換える。空欄には上から順に「強い/弱い」「道/恋」「進む/退く」のどちらが入るか?


 先の対比図によれば、「私」にとって「僕はばかだ」は「僕は強いから進むつもりだ」とKが言っていることになる。これが「居直り強盗のごとく」の意味だ。

 同様にKにとっての対比を代入すると「僕は弱いから退くつもりだ」と言っていることになる。

 だがこの言い換えは何かヘンだ。Kはそういうつもりで「僕はばかだ」と言っているのだろうか。

 この違和感の原因は何か?


 対比軸の上下(左右)を間違えているのではない。この言い換えの文型が不適切なのだ。単に対比の項目を逆にするだけではKの真意を表わすことはできないのだ。

 ではどうするか。次のように言ってみる。

恋に退いているような弱い自分はばかだ。

 これならば、Kの言っているニュアンスに近づいているように思える。

 これは先ほどの次の文とどう違うか?

僕は弱いから恋に退くつもりだ。

 ここから何がわかるか?


 つまり「私」はKが「これから」どうするつもりなのかを言っているように受け取ったのだが、Kは「今」を表現しているのだ(この「これから/今」は各クラスでさまざまな言い方が提案された。「意志/現状」「決意表明/自虐」など)。

 ということは、「精神的に向上心のないものはばかだ」は「私」はKは、どのように違った捉え方をしているということになるか?


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