教科書収録部分は以下の8つのエピソードで構成されている。
Kの告白 115頁~
①上野公園を散歩する 122頁~
②夜中にKが声を掛ける 128頁~
③朝、Kを追及する 129頁~
④奥さんと談判する 130頁~
⑤奥さんが④をKに話す
⑥奥さんが⑤を「私」に話す 136頁~
⑦Kの自殺 138頁~
上記エピソードに、上のように番号をつけておく。議論するうえで、それぞれの項目を指す番号を共有する。
それぞれが前の出来事をどのように受けている展開なのかをまず把握しよう。
プロットを流れる物語の論理が把握されているだろうか。
さてこの後が考察すべき問題だ。
①~⑦の出来事があったのはそれぞれ何曜日か?
そんなことがわかるのか?
わかるとして、そのことにどんな意味があるのか?
たとえば「私」の逡巡がどれだけの日時に渡るものなのか、沈黙に隠れたKの苦悩が何日に渡るものなのか、奥さんはなぜその日に話したのか、Kはなぜその日に自殺を決行したのか、実感として想像する上で、出来事間の「日程」が捉えられている方がいい。
それとともに、我々の生活を律する「曜日」の感覚もまた重要な手がかりとなる。「週末」や「週明け」、「週の中頃」といった感覚は心理に影響する。
こうした、読解の前提を授業の最初期に教室で共有しておきたい(ただし「Kの告白」は、曜日が確定できる見通しがないから番号をふっていない)。
さて、曜日を特定するために、どんな情報が必要か。
137頁に、⑦「Kの自殺」が「土曜日の晩」であったという記述がある。曜日が明記されているのはここだけだ。
それとともに、文中に何カ所か、日の隔たりを示す情報がある。
それらの記述を手がかりとして、明示された土曜日から遡りながら曜日を特定していく。
具体的には、本文中に以下の5カ所、「日程=期間=時間的隔たり」を示す記述がある。
- 二日たっても三日たっても 130頁
- 一週間の後 130頁
- 二、三日の間 135頁
- 五、六日たった後 136頁
- 二日余り 137頁
これらはテキスト中にマークして、いつでも参照できるようにしておく。
これらを手がかりに、明示された土曜日から遡りながら曜日を特定していく。
考察の結論にのみ意味があるということではない。
一連の考察を通して、テキスト中から必要な情報を探し出してそれを整合的に結びつけて、そこに生ずる意味を的確に捉えるという、読解の難しさと楽しさを味わってほしいとも思う。
考察結果は必ずしも一致しない。その時、異なる考察同士を比較し、その考察過程を再検討する必要が生ずる。自らの読みの根拠が問い直される。
そうして初めて、読解という行為の難しさが本当にわかるのだし、同時に、その豊穣さもまた、わかる。
こうしたことは一人で読んでいてもできない。授業という場があって初めて実現できることだ。
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