2023年10月12日木曜日

こころ 5 曜日の特定2ーエピソードの混淆

 さて、以下の8つのエピソードが並んだだろうか?


 Kの告白       115頁~

①上野公園を散歩する     122頁~

②夜中にKが声を掛ける  128頁~

③朝、Kを追及する    129頁~

④奥さんと談判する    130頁~

⑤奥さんがKに④を話す

⑥奥さんが「私」に⑤を話す 136頁~

⑦Kの自殺               138頁~


 上記エピソードに、上のように番号をつけておく。議論するうえで、それぞれの項目を指す番号を共有する。

 それぞれが前の出来事をどのように受けている展開なのかは把握されているだろうか?

 プロットを流れる物語の論理が把握されているだろうか?


 長大な①に比べると②や③は小さなエピソードで、独立させて想起することは相対的に難しい。だがそれぞれに重要なエピソードであり、今後、考察の機会がある。


 興味深いことは、④と⑦の間に⑤⑥を別項目として揃えて挙げられる人がほとんどいないことだ。思い当たる者も多いはず。⑤と⑥をともに挙げられた者は、そうとう的確に物語の流れを把握しているといっていい。

 このことが難しいのはなぜか?


 総じて⑥の方が挙がりにくいようだ。

 ⑥は「話した」という出来事であり、⑤はそこで「話された」内容だ。⑤と⑥は入れ子型の階層構造をつくっている。その時、メタな階層にある⑥は背景に退いて盲点になってしまうのかもしれない。

 だが本文中に直接書かれている「場面」は⑥であって、⑤は具体的な場面として描かれはしない。

 一方、アニメ「青い文学」では⑤の場面が描かれる。奥さんとKが玄関先で話すシーン。そして⑥はアニメでは省略されている(それでDG組以外の人には⑤が挙がって⑥が挙がらないのかもしれない)。

 授業でこの展開をやると、⑤と⑥が別の出来事であることを初めて認識して、「あ、そうか!」という反応をしている人はけっこういて、その瞬間を見るのは楽しい)。

 この⑤と⑥の構造には、実は重大な問題がひそんでいる。何か?


 読者は⑤と⑥を混同してしまうのである。

 この混同が、「こころ」全体の理解にとって重要な錯覚をもたらしている。

 それは⑤と⑦の時間的間隔についての錯覚だ。この「錯覚」については後で明らかにしよう(だが既にこの授業展開の中でH組Tさんからこの点についての的確な指摘があった)。


 さてこの後が考察すべき問題だ。

 ①~⑦の出来事があったのはそれぞれ曜日か?


 ここからは本文を見ながら、必要な情報を探す。

 どこからどんな情報を見つけて、どう考えれば、それぞれの出来事の曜日がわかるというのか?


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