一文要約をすると全体はそれなりにつかめる。だがもちろん隅々までクリアに、というわけにはいくまい。
例えば「メディア」とは何か?
題名にもあるこの言葉は、それが何を指しているのかを明示しないまま2ページあまり論が展開していくから、それが指しているものが具体的にイメージされない人には、何を言っているかがわかりにくいはずだ。
後半に入って、たとえばそれはPCだったりスマホ(ケータイ)を指しているらしいことがわかってくる。だから問題はスマホが普及したネット社会のことを言っているんだろうと見当はつく。
だが文中で最初に「メディア」の例として挙がっているのは「そろばん・電卓・コンピューター」であり、「紙や電子媒体」であり、「文字や数字」だ。
これらはどういう意味で「メディア」なのか?
「メディア」という言葉を我々が日常で目にするのはこんな用例だ。
・ そのニュースは、あらゆるメディアで一斉に報じられた。
・広報として、各メディアにプレスリリースを送った。
・ 彼女は有名人として、頻繁にメディアに露出している。
・メディアの報道内容が、必ずしも真実であるとは限らない。
この「メディア」に「そろばん」を代入することはできない。「そろばんに露出する」って何だ?
ここではメディアという言葉がそもそもどのような概念であるかを確認しておく。
メディアは「媒体」と訳されている。「媒介するもの」という意味だ。媒介されるものの多くは情報だ。マスメディアは情報源と大衆を媒介して情報を伝えるものだ。
日常使用される「メディア」の大半がこのマスメディアのことなので、我々はつい「メディア」と聞くとテレビや本やインターネットを思い浮かべてしまう。
だがそれでは「文字はメディアだ」というのが何のことなのかわからない。
だがこの文中ではマスメディアも含む原義の・広義の「媒体」という意味で「メディア」という言葉を使っているのだと了解したうえで考えよう。
「そろばん・電卓・コンピューター」がメディアというのはわかりにくい。これらは道具・ツールとでも呼ぶべきものではある。でもまあ計算しようとする人の意志、頭の働き、手の働きを計算結果に「媒介する」ものであるともいえる。
「紙や電子媒体」は? そもそもそのまま「媒体」と言っている。
こういう時は例を想起できるかどうが問われる。しかも、概念の層を揃えるのが肝心。
「紙」は、そこに文字や図、絵などを書いて(描いて)情報を伝える(媒介する)ことができる。
それに対応する「電子媒体」は?
PCとかタブレットとかいうのは概念の層が揃っていない。
メディアとしての紙には文字や図が書ける。電子媒体には電子情報が載せられる。となると…。
古くはカセット・テープ、ビデオ・テープなどのテープ類。その後継としてのCDやDVDなどのディスク類。さらにはHDや、メモリスティックやSDカードなどのフラッシュメモリ類などが想起できればいい。
では文字はどのような意味でメディアなのか?
文字は人と人、過去と未来を媒介して、情報を伝えるものだから、確かに媒体だ。
文中では文字と「数字」が並列されているが、これは的確な記述ではない。数字は文字の一種だから、「文字と数字」は「動物と犬」のような包含関係になっている。並列ではない。
では、文字と並列されるのは、例えば何か?
概念の「層」を揃えよう。「文字と数字」は層を混同している(大した問題ではないから荻上は看過しているが)。「数字」は、「数字以外の文字(漢字や平仮名、アルファベット)」と、同じ層に並ぶ。
では、文字と並列されるのは、例えば何か?
例えば話し合いの中であちこちで挙がっている「記号」も「文字」とは並列しない。文字は「記号」の一種だから、これも包含関係になってしまう。
記号>文字>数字
「文字はメディアである」と言う場合、文字によって伝えられる情報とは言葉だ。人から人へ言葉を伝える手段として、文字と並んで日常的な場面で多用されるのは何か?
そう考えれば自ずと想起されるのは声だ。
書いて伝えるか話して伝えるか。
上の問いに、まず音声を想起できるできるかどうかは、「文字はメディアである」という命題を正しく把握できているかどうかの試金石となる。
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