本文を2頁ほどで区切って章立てし、各章を3文で要約しながら読み進める。
これはつまり、その2頁ほどの内容から、重要と思われるトピックを三つ選べ、という課題だ。
小説には様々な要素が混在している。
- 状況・事情
- 行動・行為
- 心理・思考
実際にはこの三つは絡み合っていて分離できないこともある。ある場面には、登場人物が、ある「思考」をしながら「行動」しているという「状況」が描かれている。
ともあれそのうちで重要な要素、三つを選んで文にする。
むろん「三つ」という限定は少ない。だが、とにかく、優先順位の高いトピックを三つ選ぶ。その優先順位を勘案しようとすることが、その該当部分の全体を捉えようという思考になる。だから要約文としての完成度は必ずしも高くなくて良い。言い足りないままでも良い。要約しよう(トピックを選ぼう)という思考に意味がある。
とはいえ、書き出した3文で、その章の展開が辿れているかどうかをちゃんと自分で自覚しよう。
しばしば見られるのは、適当に本文の一部をそのまま切り出してしまう、というケースだ。その表現、その文言のままでは3文の繋がりがたどりにくいし、情報量が少なすぎて、3片では章全体の流れを把握することができない、といったような。
段落、くらいの塊で文章の内容をつかまえて、自分で作文しよう(ちなみに、一橋の要約問題も、基本はこのようにトピックを1文ずつ3~4文で立て、その間を滑らかにつなぐことで200字に収めるように書き下ろす)。
最も難しいのは最初の章だ。三つのトピックとして何を選ぶかという以前に、まず内容の把握が難しい。物語が動き始めてしまえばずっと楽になるのだが、最初はまず物語の世界設定の把握に難渋する。
冒頭の2頁、授業での通称1章でいうと、次のような要約はおおよそ上の3領域に対応している。
- 私はドイツから日本に向かっている船中にいる。
- 日記を書こうとしている。
- ある「恨み(悔恨)」に苦しめられている。
要約に正解はないから、これ以外の内容を含む3文になってもいい。あるいは一文に盛り込む内容が変わることもある。
- 私はドイツから日本に向かっている船中でこれ(日記)を書いている。
- ある「恨み(悔恨)」のためになかなか書き始められないでいる。
- だがその悔恨を消すことこそ執筆の動機である。
この章の要約は難しい。上のような要約をすらすらと思いつくのは相当な国語力の持ち主だ。
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