2023年5月25日木曜日

思考の誕生 19 主旨を捉える

 さてここまで、今年度に入ってから7編の文章を読んできた(さらには「言葉は世界を切り分ける」「グーグルマップの世界」「木を見る森を見る」あたりにも言及し、「ほんとうの『私』とは?」にもつながる可能性があったのだが、そこはまたの機会にとっておく)。

  • 「思考の誕生」
  • 「読む行為」
  • 「真実の百面相」
  • 「物語るという欲望」
  • 「生物の作る環境」
  • 「未来をつくる言葉」
  • 「物と身体」

 それぞれの文章の主旨を、なるべくシンプルな一文で捉えることはその都度やってきたし、それぞれの論がどのように関連し合っているのかも考察してきた。

 最後に「未来をつくる言葉」の主旨を捉え、それがそれまでの文章とどう関わっているかを考える。


 「未来をつくる言葉」の主旨を一文に表すのは容易だ。自動的にできる。

 「一文で表す」というのは「命題」の形にするということだ。名詞で終わってはいけない。主語述語が揃った形。

 主旨を一文にするには、なるべく題名を有効利用するのが簡便だ。とはいえ上記のどれもこれも体言で終わっているので、それらの名詞が主語なのか述語なのか目的語なのか形容句になるのかは、内容を把握していないと判断できない。

 「思考の誕生」なら「思考の誕生は~。」と主語に置く文も「思考は~誕生する。」と述語に置く文も作れる。

 「物語るという欲望」なら、「人には物語るという欲望がある。」か「物語るという欲望は『断絶』から生まれる。」あたりだが、この二つなら後者の方がより主旨が盛り込まれている。

 上記では「真実の百面相」が最も簡単で「真実は百面相だ。」と言えば良い。

 「未来をつくる言葉」も同じくらい簡単。次のように変換するのはほとんど自動的だ。

言葉は未来をつくる。

 これは何のことか?

 本文に「未来」という言葉は実は登場しない。ただ文末が次のように終わる。

わたしたちは目的の定まらない旅路を共に歩むための言語を紡いでいける。 

 この「目的の定まらない旅路」が「未来」の隠喩になっていることに気づけば、「言葉」が、そうした旅路を「共に歩む」よすがになるのだと言っていることはわかる。

 「主旨」というより「主張・メッセージ」くらいに拡張して言うなら?

未来をつくる言葉を共に探そう。

 くらいか。

 となるとさらに、そうした「言葉」はどのように探せば良いのか(そこにはどんな困難があるのか)、といったあたりが書かれている文章なのだと把握できる。


 さて、こうした主旨・主張とつながる論旨は、それ以外の文章のどこに見出されるか?


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